先延ばしグセと優柔不断の治し方② – 『予想通りに不合理』ダン・アリエリー著

前回の記事の続きで、行動経済学の第一人者ダン・アリエリー博士の名著『予想通りに不合理』から、今回は「選択できない(決められない)」という問題についてです。

 

 

目次

「選択できない」という問題

  • レストランで注文する時
  • 高い商品を購入する時
  • 進路を決める時
  • 就職先を決める時
  • 転職するか決める時

小さなものから大きなものまで選択する場面は無数にあります。

特に進路や就職・転職などの人生を左右しそうな大きな選択になると、決めるのがとても難しいですよね。

では、なぜ決めることがこんなに難しいのか?

それはぼく達が、「なるべく多くの選択肢を残しておきたい」という性質をもっているからです。

わたし達は全ての選択の自由を残しておくために必死になる

「決められない」ということは、正確に言うと「他の選択肢を減らしたくない」ということになりますね。

選択の自由の何がこれほどむずかしいのだろう。たとえ大きな犠牲を払ってでも、できるだけ多くの選択の扉をあけておかなければならない気がするのはなぜだろう。

この性質について疑問を持ったダン・アリエリー博士 が行なった実験が「扉ゲーム実験」です。

「扉ゲーム」実験

扉ゲーム実験は、パソコン画面に表示された3つの扉をクリックして効率よく賞金を稼ぐというゲームを学生にやらせてみるものです。

扉ゲーム内容

  1. ・パソコン画面に赤・青・緑の3種類の扉が現れる
  2. ・扉を1回クリックするとどの部屋にでも入れる
  3. ・ひとつの部屋に入ったらクリックするたびにランダムな金額が手に入る。金額は部屋によって異なる。(例えば赤の部屋なら1クリック1〜8セント、青の部屋なら5〜12セント、緑の部屋は8〜15セント)
  4. ・画面には獲得金額が表示される
  5. ・クリックできる回数は全部で100回

この実験で最大にお金を稼ぐには、もっとも高い賞金が用意されている部屋を見つけて、その部屋でできるだけ多くクリックをすること。

【実験結果】

学生にやらせてみたところ、予想通りに3つの部屋全てに入り、数回クリックして金額を確認し、一番金額が高いと判断した緑の部屋に戻り残りのクリックを全て終えた。

この実験から、アリエリー博士が推測していた、

単純な設定はっきりとした目標が与えられれば、人間は誰でも、かなりうまく喜びの源を追い求められる

ということを裏付けできました。

 

しかし、これはそこまで難しいことではないですよね。

全ての扉の確認を終えるまで、どの扉もずっと待っていてくれるんですから。

そこでアリエリー博士はこのゲームに手を加えました。

「消える扉」実験

先ほどの扉ゲームに「クリック12回分放っておくと、どの扉も永久に消えてしまう」というルールをプラスしたのが「消える扉ゲーム」です。

ゲーム内容

前回の「扉ゲーム」と基本ルールは同じです。

プラスされたルールは、

  1. クリック12回分放っておくと、扉が永久に消えてしまう
  2. 1つの扉を1回クリックするたびに、画面上では他の2つの扉が12分の1ずつ縮んでいく
  3. 縮んだ扉をクリックすると元の大きさに戻すことができる

なかなか焦る仕様になりましたよね。

これをまた別の学生で実験してみました。

実験開始

この実験をしたサムという学生は、まずは青の扉を選び、なかに入って3回クリックした。その時やはりサムの注意を引いたのは、1回クリックするごとに12分の1ずつ縮んでいく扉だった。あと8回クリックしたら赤と緑の扉はどちらも消滅してしまう。

そのままにしておくきなどサムにはなかった。カーソルを動かし、赤の扉をクリックしてもとの大きさに戻したあと、赤の部屋で3回クリックした。

しかしここで緑の扉が目に入った。あと4回クリックしたら消えてしまう。

サムは再びカーソルを動かし、緑の扉を元の大きさに戻した。

と、こんな具合でサムは消えそうな扉をクリックし戻し続けた。

【実験結果】

結果は扉が消える心配をしなくてすんだ前回の扉ゲームの実験者に比べて獲得金額が15%も少ないという結果でした。

本当はどの部屋でもいいから1つの部屋に扉にしぼり、実験が終わるまでその扉をクリックし続けるほうが賞金を稼ぐことができたのですが、サムにはそれができませんでした。

 

この実験からアリエリー博士が発見したことは、

この実験からはっきりとわかるのは、あちらこちらへとめまぐるしく動きまわるのは、ストレスになるだけでなく、不経済だということだ

 ということでした。

 

選択できるようにするには

人々は機会がないことではなく、めまいがするほど機会がありあまっていることに悩まされている。   

哲学者 エーリヒ・フロム

この扉ゲーム実験で得られた「選択できるようになる」ための知識は、2つあります。

1つめは、

 

1.意図的に扉を閉める必要がある

 

ということですね。簡単にいうと「選択肢を減らすことに力を入れる」こと。

そしてもう1つが、

 

2.決断しないことの影響を考える

 

です。

「どれを選べば損しないか?」を僕たちは考えがちですけど、「選んでいる間にどんどん損をしている」という事実を思い出せば、しっかりと決断さえできれば「選択の判断が合っているかどうかはともかく、決められない間に発生する損は防げた」という前向きな感情が出てきてくれるはずです。

 

終わりに

アリエリー博士のナイスな実験で、ほんとうに良い知識もらえたなぁと感じています。

僕の例でいうと、このブログを始めた時も「どんなブログにしようかなぁ?」と考えて全く書けない期間が何ヶ月もあったのですが、あれって本当に無駄な時間だったなって感じてます。

色々な選択肢を吟味する時間も大事ではあるんですけど、今思えば悩んでた時間でどっちの選択肢も試せたなって思いますし。

 

どちらを選んでも良い結果に出会えるような素敵な選択肢を前にして、どちらも選べずに機会を逃すような間抜けにはならないように、お互い気をつけましょう。

 

この「選択の問題」については、ちきりんさんの『ゆるく考えよう』という本にも参考になるところがあったので、次はその記事を書きたいと思います。

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