Horse Riding – the HIATUS

 

昔から映画、漫画、小説、ドラマ、ととにかく物語が好きなせいか、音楽でもストーリーテリングな歌詞に心を鷲づかまれることが多い。

 

たった3、4分の曲の中で一本の素晴らしい映画を観たような曲に出会った時には、感動してから興奮して、そして憧れて、自分でも作ってみたくなって、やってみて、難しくてすぐ諦める。 ってことを何度も繰り返してしまうほど浮かれてしまう。

好きなアーティストの新曲の歌詞がストーリーテリングだったらいいなぁと思うほどだ。

 

 

the HIATUSHorse Ridingという曲の歌詞は本当に素晴らしい。

ストーリーテリングな曲の中で数々の素敵な登場人物達に出会ってきたけど、僕はこの曲の主人公が一番好きだ。

  

 本当に馬が疾走しているような音楽。

 

 

「あの話をしておけば良かったな」という心残りを男がつぶやくところから始まるこの歌は、戦争に駆り出されてしまった青年が戦地で「君」を思っている心情が描かれている。

 

僕が想像するこの主人公は、特別楽しい遊びもなくだけど嫌なことも少ない田舎町生まれで、欲深さがなく、日々仕事をして夜になると友達や「君」と遊ぶ。

そんな日常に素直に幸せを感じることができる少し退屈だけど優しい青年だ。

そんな平凡と言っていい青年の、永遠にも感じれる日常が、ある日電話のベルが鳴り、終わってしまう。

 

戦地で青年はこの戦争が終わったら君の胸で泣きたいなと思う。

そんな青年の小さくて切実な願いを掻き消すように「三日目の朝までに制圧する」という不吉を孕んだ言葉が聞こえる。

 

青年は自分の心のなかの空よりも明るく見えるほどの「君が」写っているすり切れた写真を眺める。

そして「君」の唇に触れられるならなんでもすると心に決める。

 

 

 

こんな物語である。

なんだかわかってはいたけど、こうしてこの曲のなかにある物語だけを書き出してみるととてつもなく悲しい。

だがこの物語は強烈に希望を感じさせてくれる。

 

理由はこの物語の主人公である青年が優しいからだ。

 

この曲の最後に「僕はさまよう全ての人に 指で十字を切る」というフレーズがある。

この青年は戦争に参加させられるという、想像できる限りの中で、最も悲劇的な状況の中、さまよう全ての人に祈ったのだ。

 

祈ったからといってどうなるわけでもない。

でも自分のいる虚しい状況へのささやかな勇気ある抵抗にもみえる。

青年は戦争に巻き込まれてしまっているけど、飲み込まれてはいない。

他人を思う気持ちをなくさない、人間の尊厳をなくしていない青年がとてつもなく愛しい。

 

 

 

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